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カルマン症候群

「カルマン症候群」の患者さんのために

岡本内科こどもクリニック院長
元奈良県立医科大学内分泌代謝内科教授
現畿央大学客員教授
岡本 新悟

はじめに

私は内分泌を専門としてこの40年近く診療を続けてきました。その中でも特に成長障害を専門として研究を続けてきたためカルマン症候群の患者さんを診る機会が多く、原因遺伝子の一つであるKAL-1遺伝子の解析を日本で初めて成功し、日本人のカルマン症候群の遺伝子異常の頻度を国際学会(第11回国際内分泌学会:シドニー)で報告しました。そのため最近カルマン症候群と診断された患者さんや自分がカルマン症候群ではないかとインターネットで調べて遠方から私のクリニックに相談に来られる患者さんが少なくありません。そのために簡単な解説が必要と考え診断から治療までを紹介することにしました。まずはこの解説をお読み頂き相談を承りますので参考にして下さい。

1. カルマン症候群とは:

「カルマン症候群(Kallmann syndrome)は嗅覚性器症候群とも称され、性腺機能低下症と嗅覚欠損を伴う一つの疾患グループを言います。原因は嗅神経の発生とその神経の軸索伸長の異常により、それに伴って移動する性腺刺激ホルモン放出ホルモン分泌神経細胞(LH-RH分泌神経細胞)が視床下部に移動できないために性発育が胎生期から進まず性腺機能低下症と嗅覚欠損を伴う疾患です。原因は遺伝子異常や発生と分化の異常などがあります。」

この説明はよほど医学的な知識を有する方にしか理解できませんのでここでは改めて簡単に説明しましょう。要するに臭いを感じる神経(嗅神経)と、脳内の視床下部という性発育を司るセンターから指令を出すホルモンを分泌する細胞は同じ道をたどって完成するため、嗅を感じる神経のでき方に異常があると臭いが分からないだけでなく、性発育も進まず二次性徴も完成しないことになるという事です。頻度は5万人に1人とされています。

2. 原因はどこまで分かっているか:

現在遺伝子異常ではX染色体短腕上の有る部分(22.3領域)にKAL-1遺伝子があり、この遺伝子は神経の軸索が伸びて行くときに必要な接着因子の機能に関係があるとされています。そしてこの遺伝子に異常があると嗅神経の発達が障害されカルマン症候群が発症するとされています。私のグループは日本で初めてこのKAL-1遺伝子の解析に成功し、日本人のカルマン症候群19例を検査し4例にKAL-1遺伝子異常を明らかにしました。他の15例はKAL-1遺伝子には異常はなく今のところ原因不明です。諸外国でもカルマン症候群のKAL-1遺伝子異常の頻度は20%程度とされており、さらにKAL-2遺伝子の解析がなされていることころです。

3. カルマン症候群は遺伝するか:

カルマン症候群で遺伝するグループと遺伝とは関係なく発現する例があると考えられています。KAL-1遺伝子の異常ですと、それはX染色体上に乗っているので男性で治療により妊孕能(子供を造る能力)が得られて子どもができますと、その方の子ども達では男子は発症せず原因遺伝子も持たないことになります。しかし女子の場合は全員父方からのX染色体の異常遺伝子を受け取ることに成り保因者となります。そしてその子が結婚して子供ができるとその子で男子の半分がカルマン症候群として発症します。さらに女子ならば半数が保因者で残りの半数は正常ということになり、メンデルの法則に則って遺伝していくことになります。以前は治療されていなかったために挙児が得られずその代で遺伝子の伝播は終わりという事でした。ただ8割以上は遺伝に関しては不明ということになります。

4. カルマン症候群には嗅覚欠損と性腺機能低下症以外に合併する症状があるか:

単に性腺機能低下症と嗅覚欠損だけでなく、色々な合併症を伴っている患者さんがあります。文献的には小脳性運動失調症などが記載されていますが、私の患者さんでは1名だけ経験があります。他に片側腎欠損や膀胱尿管形成異常などがあり、泌尿生殖器の形成不全には注意する必要があると思います。一方難聴や色盲を伴う例もあります。知的には全く正常であり、社会生活や就労に関して問題となる様な合併症はありません。私が治療している色盲と難聴を伴う患者さんはそのハンディーを乗り越えてコンピュータエンジニアとして活躍しておられます。

5. どの様な経緯で発見されるか:

私は現在まで約30名近いカルマン症候群を治療してきており、遺伝子解析を行った患者さんの調査も含めて発見された経緯について紹介します。ほとんどの例が20歳を過ぎて二次性徴が現れないことで泌尿器科や内分泌内科を訪れています。そして偶然他の病気で検査を受ける途中に二次性徴が見られないことから私の所に紹介された例、さらには今まで治療を受けていない方で自分でインターネットで調べ、私の論文や診療内容を知って受診してきた患者さんがあります。自ら相談に訪れる方の多くは30代から40代初めで発見が遅れ、強いコンプレックスを抱いておられます。臭いが分からないことでは特に生活に支障が無いため、嗅覚欠損から診断されてくる例は殆ど有りません。もし小児期に嗅覚欠損が有る場合にはカルマン症候群を疑って早期に診断し、思春期年齢から同年齢の子どもと足並みをそろえて治療を開始すればコンプレックスを抱くことなく生活できると考えられます。私が開発した成長障害のスクリーニング法であるWHAMES法で発見された例は17歳でちょうど治療開始する年齢での発見で現在29歳になっておられますが、結婚して幸せに生活しておられます。今後遺伝子解析のデータが次世代から次次世代の早期発見に役立つと考えて期待しています。

6. どの専門医が治療を担当すべきか:

カルマン症候群の性腺機能低下症の原因が視床下部からのLH-RH分泌障害であり、外科的な治療を必要とすることがないことから、内分泌専門医がその治療を担当することになります。本来性腺に問題のある疾患では有りませんので泌尿器科医の担当する疾患ではありません。しかし日本には内分泌の専門医で性腺疾患の治療を専門とする医師は少なく、経験を有する医師を探すことが大切でしょう。私は日本内分泌学会の会員であり、小児内分泌学会の会員でもありますので日本でどなたがカルマン症候群の治療ができるか十分情報をもっております。

7. カルマン症候群の診断はどうするか:

カルマン症候群の診断は決して難しいものではありません。カルマン症候群の診断基準である嗅覚欠損と性腺機能低下症の原因が視床下部にあることを証明すれば良いからです。カルマン症候群が疑わしいという事で当院に受診された場合、先ず嗅覚検査を受けて頂きます。専門のナースが何種類かの臭いをかがせて5段階評価して点数をつけます。 殆どの方は全く臭いが分かりません。すなわち生まれてから臭いというものを知らないため臭いというものがどの様なものが分からない様です。次に身体所見として精巣(こう丸)の大きさをオルヒドメータという精巣の大きさを対比するモデルと比較して測定します。さらに血液検査で下垂体からのゴナドトロピン(LH、FSH)と血中テストステロン(Te)を測定します。同時に他の下垂体ホルモンの測定も行って下垂体からゴナドトロピンだけが出ていない(ゴナドトロピン単独欠損症)ことを証明します。この時点で嗅覚欠損とゴナドトロピン分泌不全が明らかになれば、下垂体のゴナドトロピンの分泌を刺激するLH-RHという視床下部ホルモンの注射を行って下垂体からLH,FSHが分泌されるかどうかを確認します。視床下部に原因があるカルマン症候群では下垂体の機能は正常ですからこのLH-RHの刺激でLH,FSHは反応します。1回目の刺激では低反応ですが連続刺激を行いますと正常域まで上昇反応がみられますのでこれで視床下部性かどうかの診断が可能です。 最後に頭部のMRI検査で嗅神経の欠損が有るかどうかを画像で確認します。

以上 ①嗅覚欠損があること、②低ゴナドトロピン性性腺機能低下症があること、③視床下部性性腺機能低下症であること、④嗅神経の欠損を伴っていること。が証明されれば確定診断となります。

当院には遠方から受診される事が多く、1日で検査が終えられるように用意しています。当院に受診されるときには事前に予約して頂き、LH-RH分泌負荷試験から頭部MRI検査まで全て一日で終えて、遠方なら飛行機で帰って頂けるように組んでいます。カルマン症候群と診断できたならその後はカルマン症候群に稀に合併する疾患(片腎欠損や色盲、聴力障害、小脳失調症など)を慎重に見極めて治療に入ります。

8. カルマン症候群と診断されたら医療費はどうなるか:

カルマン症候群の治療はゴナドトロピン療法というホルモンの補充療法です。ゴナトロピン®とゴナールF®いう2種類のホルモン製剤の自己注射で欠乏しているホルモンを補うことになります。いずれも高価な薬剤ですので現在カルマン症候群は難病の特定疾患として医療費の多くの部分が公費負担となり医療費の心配をすることなく治療ができます。診断の結果が得られましたら低ゴナドトロピン性性腺機能低下症(国が作成した申請書の不備で下垂体機能低下症の1疾患として)の申請書に主治医が記載して、ご家族がその申請書をもよりの保健所に提出します。特定疾患の審査は県によってことなりますが2か月以内には判定され、ご家族と医療機関に連絡が入ります。医療費の補助は診断されて申請書が作成された日からスタートとなり、認定が下りるまで治療を開始してもその間の医療費は補助されます(奈良県の場合)。

9. カルマン症候群に対する性腺治療とは

(1) ゴナドトロピン療法について

カルマン症候群は視床下部という下垂体よりも上位のセンターからの刺激ホルモンの分泌障害ですから、治療の基本は下垂体からのLH(黄体化ホルモン)とFSH(卵胞刺激ホルモン)などのゴナドトロピンという性腺刺激ホルモンの作用を有するホルモン剤の注射となります。そのためこの治療法をゴナドトロピン療法と言います。前述のLH,FSHは女性の性腺に対する作用から命名されていますが男性でも全く同じです。LHは精巣や卵巣に働いて男性ホルモンや女性ホルモンの合成を調節する働きがあり、一方FSHは精子を造ったり卵巣を発育させ排卵させたりする働きがあります。そのLHと同じ働きをするホルモンとしてヒト胎盤性ゴナドトロピン(hCG)といった胎盤組織から抽出したホルモン製剤であるゴナトロピン®の注射と使います。一方FSH作用を有する製剤としては以前ヒト更年期女性ゴナドトロピン(hMG)といった更年期女性の尿か抽出したホルモン製剤を使っていました。しかし最近では遺伝子工学で合成したヒトFSH製剤(rhFSH:)であるゴナールF®が使われています。カルマン症候群の多くは男性(女性は稀ですが私は2名治療しています)ですのでまずは男性の治療を念頭に説明します。

(2) ゴナドトロピン療法の進め方

思春期前に発見された場合は思春期前の血中テストステロンレベルを模倣する少量のゴナトロピンからスタートします。この様な早期診断で発見される患者さんは稀ですが今後早期に発見される例に対してはそれなりの配慮をもって治療を開始し、本人にも治療の意味を理解させながら生涯治療を続ける必要性を説明しておく必要があります。一方2,30代で治療を開始する場合、まずゴナトロピン®単独で治療を開始します。最初は 1000単位を週2回から開始し、3ヵ月後から3000単位を週2回で続け、半年後の血中テストステロン(注射と注射の中間で採血)を測定してテストステロンが200ng/dlを超えたころからFSH製剤であるゴナールF®を併用します。その量は75単位を週2回が通常使われる量です。そして1年後には血中テストステロンが年齢相当の 500ng/dl ~800ng/dlに入る程度にゴナトロピン®を増量します。私が使っているゴナドトロピン療法の平均的な量は、ゴナトロピン® 5000単位週2回とゴナールF®150単位週2回です。いずれも自己注射が認められており、自分で安心して注射が出来るように指導します。

最近FSH製剤を先行して治療を開始したり、ゴナトロピン®と同時にスタートする方法も検討されています。またゴナールFを最初から150単位でスタートする場合もありますが、私は精子形成を刺激しておきながら結婚されて挙児を希望されるときから150単位から300単位に増量する方法で挙児を得ています。

(3) 血中テストステロン値が十分上昇しない時の治療

カルマン症候群の様なゴナドトロピン分泌に障害がある例には基本的にはテストステロン製剤という精巣から分泌される男性ホルモンは使いませんが、ゴナドトロピン療法だけではなかなか血中テストステロンが上昇しない場合があります。その様な時には何とか二次性徴を早く導いていあげる為にエナルモデポー®という男性ホルモン製剤を併用することがあります。ゴナドトロピン療法で精巣を刺激しておきながらエナルモンデポー®を使うことは決して精巣を委縮させることはなく、私は一時期エナルモンデポー®を併用して3人の挙児を得た患者さん経験しています。ただゴナドトロピン療法の効果が十分得られるようになればエナルモンデポー®は終了します。ここで注意しておくことは、カルマン症候群の治療にはエナルモンデポー®単独では行わないという事です。注射によるテストステロンにより精巣の発育や精子形成が阻害されるからです。私が現在治療している患者さんの2人は以前に他のドクターにエナルモンデポー®だけで治療を受けており、精巣の発育は全くなく、二次性徴としての陰毛や陰茎の発育だけが見られた例を経験しています。カルマン症候群の治療の基本はゴナドトロピン療法です。そして挙児を得たり、挙児を希望されなくなれば以降はエナルモンデポー®を125mgを2週間に1回の注射をつづけます。

(4) 精子形成が不十分な場合や男性不妊に対する治療

ゴナドトロピン療法を続けておれば2,3年経つと精子が確認できるようになります。しかし精子数が少ない場合には妊娠させられる確率は低くなります。その場合血中テストステロンの値を年齢の中間値以上に維持できるゴナトロピン®の量を続けながら精子数を確認しながらFSH製剤を倍量から3倍量に増量します。ゴナールF®を150単位週2回から3回とします。場合によっては体外受精を勧めることがあります。

(5) 女性のカルマン症候群に対する治療

カルマン症候群の女性例は非常にまれですが私は3名の患者さんの経験があります。一人は出産を希望されてこられた30代初めの方ですが、それまではカルマン症候群と診断されないままカウフマン療法という女性ホルモンだけの治療を続けてこられました。その後ゴナドトロピン療法に切り換えて妊娠され無事出産されています。もう一人は現在20歳前ですがカウフマン療法に、ゴナドトロピン療法(週1回1000単位のゴナトロピンと週2回75単位のゴナールF)を続けています。もう一方30代の女性で妊娠を希望されており、婦人科の医師の協力でゴナドトロピン療法とカウフマン療法の併用で治療を続けています。何とかお子さんをと私も努力しています。女性の場合ゴナトロピンを過剰に続けると卵巣腫大と出血などを来すいわゆるOHSS (ovarian hyper-stimulation syndrome)を引き起こすために、卵巣を有る程度思春期前レベルに発育を維持しておくようにしています。そして結婚されて妊娠を希望された場合には婦人科の専門医に排卵促進の治療をお願いすることしています。

10.性発育不全に伴うコンプレックスからの開放

相談に来られた患者さんの話を聞いておりますと、患者さんがいかに大きなコンプレックスを抱いておられるか想像を超えることがあります。しかし治療により正常と同じ様に二次性徴も完成し治療で精子もできて子供もできる様になりますと説明しますと喜びを満面に「そうだったんですか。良かった―。よろしくお願いします」と言ってくれます。そこで私はさらに、「あなたの性腺である陰茎、陰嚢と精巣は生まれつき全く正常なのですよ。ただ脳の方から二次性徴を進めるための指令が出なかっただけで、性腺の異常ではなく、脳の中のホルモン分泌の問題です。ですから治療をすれば本来の正常な身体になります。自信を持ってください。」と付け加えます。このコンプレックスがある限り女性との交際や結婚まで到達する心理的な自信に欠けることになり、なかなかパートナーを見つけられないことになります。確かにカルマン症候群の男性の婚姻率は他の性腺機能低下症(下垂体機能低下症)と比べて低いのが現状です(ニューヨークでの学会で報告)。そのためには早期診断と適切なゴナドトロピン療法、そしてコンプレックスから解放させるための心理的サポートが必要なのです。

11.カルマン症候群の相談窓口:

カルマン症候群と診断された患者さんや自分がカルマン症候群ではないかと思われる方の相談を下記のメールアドレスで相談を受け付けています。

E-mail: iryousoudan-ok@hotmail.co.jp

参考文献:

  1. Kallmann 症候群のKAL-1遺伝子解析と告知並びに生涯ケア
    岡本新悟、モハマド・セリム・レザ、榑松由佳子
    日本遺伝カウンセリング学会誌, 26:49-54,2005
  2. Kallmann syndrome
    泉 由紀子、岡本新悟
    診断と治療、86:454,1998
  3. A novel mutation of the KAL-1 gene in monozygotic twins with Kallmann syndrome.
    Matsuo T, Okamoto S, Izumi Y et al.
    European Journal of Endocrinology, 143:783-787,200.
  4. Analysis of the KAL-1 gene in 19 Japanise patients with Kallmann syndrome.
    Izumi Y, Tatsumi K, Okamoto S, et al.
    Endocrine Journal, 19:143-149,2001

お問い合わせ、ご予約は: JR・近鉄 桜井駅 岡本内科こどもクリニック
電話 0744-42-4152 FAX 0744-42-4131

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